photo Koichi Torimura
医する家
「開放的に明るく」「湖の底にいるような静寂を」「好きなものに囲まれたい」など、10組には10通りの「わたしの暮らし」がありますが、今回は、家族が揃う夕方以降が大切な時間だとお考えになっているお客さまのための計画です。夜の落ち着きと癒し、安心感とは何かを重視して検討していきました。
まず細く長い敷地に対してわざとその長さを生かして実面積以上の広さを演出するようなプランニングを行い、南向きには拘らず近隣環境的に将来にわたって開放感が期待できる北側に向けて建物を開くことで優しい光と抜け感が得られるようにしました。
その上で、外に対して閉じつつも閉塞感を出さないよう配慮しながら開口部を配置し、力強い木梁と美しい木目の板が連続する屋根と壁とを兼ねるような外皮で建物全体を包んで安心感を与えています。
また、通常よりも広大な面積で現れてくる金属板金面はシャープな陰影と軽やかなリズムを持つ立平葺きとし、外構や湿式壁や玄関周りには少し和を感じる質感や色味を与えることで、建物全体に凛とした空気感を醸し出しています。
「医(い)する」とは、癒す、治す、という動詞。仕事を終えて帰宅した際に、ホッと和める家であって欲しいと考えています。